子供の学力向上【4】高校へ行くということ

「目標」と言った場合、多くの中学生たちにとって最も身近な目標は高校受験でしょう。ここでは「高校へ行くということ」について、特に生徒の皆さんへ向けてお話してみたいと思います。

中学校までは「義務教育」と言います。もちろん聞いたことがあると思います。この「義務教育」の「義務」というのは一体誰にあるかご存知ですか。勘違いしている子供がいます。「義務教育だから行きたくないのに学校へ行かなければいけない」…そんなことはありません。皆さんに中学校へ行く義務はありません。

この「義務」というのは、ご両親、あるいは社会にあります。お父さんお母さんに、子供を中学校までは行かせる義務があるのです。そして、子供たちには一体何があるかと言いますと…当然「義務」の反意語、そう「権利」です。皆さんには、中学校までは行く「権利」があります。ここでちょっと考えてほしいのですが、高校は「義務教育」ではありません。当然、ご両親に子供たちを高校に行かせる「義務」はないということになります。ということは同時に、子供たちに高校に行く「権利」はないわけです。「義務」も「権利」もないのです。それなのに、なぜ皆さんは高校に行きたいと言い、ご両親は高校に行かせようとするのでしょうか。

実は、親の側の答えは非常に簡単ですー子供が「行きたい」と言うからです。

自分の子供が「何々したい」と言ったとき、それをさせたくないと思う親は一人もいません。自分の子供が「高校に行きたい」と言えば、親というのは自分の着る服を一枚我慢しても、食べるおかず一品を減らしてでも行かせようと思うものです。私たちも人の親ですから、それは分かります。問題は、あなたはなぜ高校に行きたいのか? それを考えてほしいのです。

高校へ行く目的は、もちろん一つと限るわけではありません。ただ外していけないのは「勉強するため」です。

中学校までもそうなのですが、高校というのは第一義的に勉強するところです。それを意識しないで高校生になると辛い思いをすることになります。もし勉強せずに基準点が取れないと、「留年」というのがあります。「あなたは進級するだけの実力を身に付けることができなかったので、もう一回1年生をやりなさい」と言われてしまうのです。受験校を決める時、最後切羽詰まってくると高校の定員割れを期待する生徒が出てきます。定員割れをすると公立高校の場合、原則として全員合格です。すると入学することはできますが後で大変辛い経験をすることがあります。そうならないためにも、まず「勉強すること」を高校へ行く目的の一番に掲げてほしいのです。なぜ勉強が必要かを一言で言えば、「学力という生きる力を身につけるため」です。それは「幸せになるため」に必要です。「人が何を幸せと思うか」というのは、これは哲学の問題です。人それぞれが問われていることです。しかし幸せになるために、学力は欠かせない要素です。

もちろん、高校へ行かなければ幸せになれないということではありません。かつては高校へも行かずに総理大臣になった人がいます。また、高校へ行かずに美容師の道へ進んで自分の店を何軒も切り盛りしている人も知っています。高校へ行くことが絶対条件ではないけれども、一番の方法であることは間違いないでしょう。だから私たちは、誰もが高校へ行った方がいいと思っています。

高校に行く理由は他にもいっぱいあります。例えば甲子園に行きたいから高校で野球をしたい。あるいは将来、芸術家になりたい。画家になりたい。だから高校の美術科に行きたい。将来デザイナーになりたいのでデザイン科に行きたい。車が大好きで、車の整備工になりたいので機械科へ行く。すべてOKです。それぞれ、すべてが勉強です。勉強というのは、英語や数学だけを指すのではありません。整備工になるには機械の勉強をしなければなりません。画家を目指す人は絵の勉強を、プロ野球選手を目指す人は野球の勉強を、そして、将来エンジニア、あるいは数学の先生になりたいと望んでいる人は数学の勉強をしなければならないのです。全部勉強です。それができる子供たちにとって最も身近な場所が、高校だろうと思うのです。もちろん、たくさんの友人を作って楽しい思い出を作ることも、高校に行く目的の1つです。大いに青春を謳歌してください。しかしそれも、学業の充実があってこそ心から楽しめるものなのです。

皆さんは、なぜ高校へ行くのですか。これを機会に考えてください。高校へ行くモチベーションを持つことが、今の学習効果を高め確かな学力を身につけることにつながっているのです。